第六章 嵐の前夜

第9話 1/2/3/4/5/6

ランベックに着いたグスタフは大長老イゴールにダークエルフ警備兵が持ってきたという衣服とカバンを見せてもらった。グスタフは自分の目を疑った。それはベロベロの物に間違いなかったのだ。

ビリビリに裂かれた衣服は血に染まっていて、カバンもひどく破れていた。誰が見ても、その服を着ていた人は死んだとしか思えないほどひどい状態だった。グスタフは黙ってランベックを離れて家に戻ってきた。

その後、何日も昼夜なしにベロベロの死に対して考えた。自分の友人が死んだという事実を受け入れることが出来なかった。眉毛ミミズク一族は、ミミズクを使っていつ、どこでも素早い連絡を取ることができる一族であるため、ベロベロから連絡がないという事実は、彼に何かあったとしか思えなかった。グスタフも知っていた。

しかし、頭では理解していても心はまだ断念できず、ベロベロの死を否定し続けていた。グスタフは深くため息をついてから額縁をベッドの隣に戻して目を閉じた。

夜はどんどん深まり、細い三日月は西に向かっていた。深まった夜はまるで時間の流れが止まったかのようにもみえたが、新しい朝を迎えるための絶え間ない動きが人知れずあった。

また昇ってくる太陽を迎えるために、閉ざされた蕾の中からは花がきれいに花びらを整えて、ミミズクは眠る前に空いたお腹を満たすために、得物を捜して森の中を飛び回った。宝石のように光っていた星たちも眠そうにその光を弱めて、緑の幼い葉っぱに朝露がおり始めたころ、太陽は東から大きく伸びをした。

グスタフは夜中、あらゆる考えが浮かんできて一睡もできず、結局、日差しが窓から差し込まれてくる頃には寝るのを諦めてベッドからあがってリビングに向かった。


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