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第四章 隠された真実 第1話 08.08.27
 
真っ白のマントを被った5人が輪を作って立っていた。
そしてその輪の中には縄に縛られた1人の男が
土下座をした態勢で震えている。
男は必死でその輪の中から抜け出そうとしていたが、
周りの5人が彼の肩を押していて、抜け出すことができなかった。

男の正面に立っている者は彼の頭に左手を置き、
ワンドを握った右手で空を指しながら何かを叫んでいた。
その声は離れた場所に隠れているトリアンの耳までにはっきり聞こえてきた。

「我々のマレアよ、この罪人が自分の罪を死で償い、
我々は彼にお許しを下すことを願い、願わくは神の手で我々をお救いくだされ!」

生まれて初めて聞くその祈りが終わるや否や、悲鳴が森の中に響いた。
縛られていた男は倒れ、その周りに立っていた5人の白いマントには
赤い花びらのように、血が飛んだ。

その中の1人の男が縛られていた男の死を確認し、
5人は頭や顔まで被っていたマントを脱いだ。
彼らの顔を見たトリアンは息ができないほど驚いた。
彼らはトリアンと同じ、エルフだった。
あの噂は本当だったのか。

最近漂う狂信者についての噂をトリアンは信じなかった。
噂というのは真実より膨らむものだと彼女は思っている。
それにいくら混乱な時代だといっても誰でもないエルフが同じエルフを虐殺する
といったことをするはずがないと信じていた。

そのため、女王のシルラ・マヨルがトリアンと含めた魔法師達に
その噂について調べることを命じたとき、トリアンは大したことでもないと思った。
トリアンと3人の魔法師は担当地域を分け、
女神の泉やその付近の地域をトリアンが調査することになった。

モンスターの数が増える事によって町の数が減る、もしくは要塞になっていた。
そして住民の不安がる姿も見かけた。でも噂の狂信者は見つからない。
ついさっきまでもトリアンは仕事ではなく、旅でもしているような気持ちでいた。

しかし狂っているといっても言い過ぎではないことを目にしたトリアンは
その噂が本当に起きていることで、思ったより深刻であることに気付いた。

「これで1つの罪がまた浄化された。この世の全ての罪が浄化されれば、
女神もまた我々の前にその姿を現すだろう。その時我々は神に救われるのだ」

祈りを呟いた男がまるで独り言のようにしゃべり、
そばにいたエルフは全員うなずいていた。
そしてしばらくそのまま立って祈りをあげた後、
またマントを被ってその場を去ろうとしていた。

トリアンは素早くワンドを握り、呪文を呟いた。
緑の風がトリアンのワンドから流され、狂信者らを囲んだ。
彼らは慌てて逃げようとしたが、土から出てきた木の幹が足首を巻いていることに気付いた。

「何者だ!」

トリアンは万が一のために彼らが腰につけていたワンドを落としてから近づいた。

「私の名はトリアン・ファベル。
女王陛下の命令であなた達の罪を問うために来ました。」

「陛下?我々が一体何の罪を犯したというのか。
女神マレアのために罪まみれのこの大陸を浄化しているだけだ!」

淡い緑の目をした狂信者が叫んだ。
彼はさっき死んだ男の頭の上に手を置いて、祈りを呟いた者だった。

「あなた達は兄弟のような私達の同族を殺したんです。
マレアがそれを望んでるとも思ってるんですか。」

いくら祈ったって女神は応えないのに、
あなた達の祈りなんか何の意味があるのか。
トリアンは心の中で彼らに聞いた。
そしてその答えも分かっていた。

「そいつは泥棒だった。自分の罪を償うのは当たり前じゃないか」

物を盗んだから殺した?トリアンは唖然とした。
トリアンの反応を気にもせず、リーダーだと思われる狂信者が自分の信念について熱く語り始めた。

「何故この大陸に溢れる悪の気運や混沌で我々が苦しんでいるのか分かるのか。
それは我々の罪が浄化されず、大陸を汚してしまったせいだ。
神々は我々が大陸を汚したことに怒り、モンスターや病気などで我々を罰しているのだ。
愚かな者よ。これが真実だ!」

「女王陛下や神官、どのお方もそんなことをおっしゃったことがないのに、
あなた達は何を根拠に神が私達を罰しようとしていると思うんですか」

「ラウケ神団について知ってるか。
彼らはヒューマンの預言者、ヘルラックの預言書を基本に作られた宗教団体だ。
彼らは聖殿に書かれた預言を大陸の全種族に伝えるために全大陸を旅している。
そして我らは先月彼らに会い、真実を聞いた。
我らはこの大陸を救うために真実通りに行動しているだけだ」

ヒューマンの預言者ヘルラック?
世の中がこうなることを知ってた人もいたのか。
もしかすると女王陛下や大神官様は何の意味もないことをなさっているのでは?
神についての真実を隠すことだけが最善の方法なのか。
トリアンは自分の心の奥から溢れる混乱を感じ、めまいがするほどだった。
ワンドを落としそうになってトリアンは気を取り戻した。

「エルフの歴史上最高の預言者だといわれるリマ・ドルシル大神官様も
そんな預言はなさったことがありません。
そして歴史上のどの神官も同じです。
なのに名も知らないヒューマンの預言者の預言に騙されるなんて、エルフとして恥です。」

トリアンは叱るような言い方だった。
緑の目の信者は黙ってトリアンを見た。
そして呟くような声で答えた。

「涙の洞窟…預言者デルピンを忘れたか」
第2話もお楽しみに!
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